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The healing effect of hydrogen-rich water
on acute radiation-induced skin injury in rats
放射線による皮膚ダメージに対する水素水の治癒効果
(10秒で読めるまとめ)
がんの放射線治療で起こる皮膚ダメージをラットに再現し、傷口に4週間(1日3回)水素水をスプレーしつづけた結果、水素が、強力な抗炎症・抗酸化作用を発揮して皮膚の再生・治癒を加速させ、水素の濃度を上げることでその効果が高まることがわかった。
(1分で読めるまとめ)
◆結論
水素が、炎症を抑えて皮膚の再生を促進することで、放射線による皮膚ダメージの治癒
を早めることがわかった。
◆ポイント
· がんの放射線治療では、放射線が正常な皮膚細胞にもダメージを与えてしまい、治療を受けた人の約85%が中程度〜重度の皮膚炎を起こす。 |
· ラットに放射線レーザーを照射し、放射線治療による皮膚ダメージを再現した後、1日3回水素水(濃度1.0 ppm/2.0 ppm)または水をスプレーするグループに分け、傷口の状態や治る早さを比較した。 |
· 水素水をスプレーしたグループでは、酸化ストレスの程度を示す値(MDA)と炎症を誘発する因子の値(IL-6)が著しく減少し、皮膚再生を促す因子の値(EGF)が明らかに増加した(論文中の図表参照)。 |
· 水素濃度が高い水素水を使ったグループでは、治癒率がより高まり、治癒時間がより短縮した。 |
(原文と翻訳)
Abstract
This study aimed to determine the healing effect of hydrogen-rich water (HRW) on radiotherapy-induced skin injury.
【目的】この研究の目的は、放射線療法による皮膚損傷に対する水素水(HRW)の治癒効果を判断すること。
Rats were irradiated with a 6 MeV electron beam from a Varian linear accelerator. After skin wound formation, rats were individually administrated with distilled water, HRW (1.0 ppm) or HRW (2.0 ppm). We measured the healing time and observed the healing rate of the wounded surface. After irradiation, the malondialdehyde (MDA) content and the superoxide dismutase (SOD) activity in the wounded tissues were evaluated, as determined using an MDA and SOD assay kit. Interleukin-6 (IL-6) and epidermal growth factor (EGF) levels were assessed by enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA).
【方法】ラットにVarian線形加速器から6MeVの電子ビームを照射して皮膚創傷を形成した後、蒸留水または水素水(1.0 ppm/2.0 ppm)を個別に投与した。治癒時間を測定し、創傷面の治癒率を観察した。照射後、負傷した組織のマロンジアルデヒド(MDA)含有量とスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性をそれぞれのアッセイキットを使って評価した。IL-6と上皮成長因子(EGF)の値は、酵素免疫測定法(ELISA)によって評価した。
Models of skin damage were successfully established using a 44 Gy electronic beam. The healing time was shortened in the two HRW-treated groups (P < 0.05). Furthermore, interventions of HRW resulted in a marked reduction in the MDA (P < 0.05) and IL-6 levels (P < 0.01). Additionally, the SOD activity in the two HRW-treated groups was higher than that in the distilled water group at the end of the 1st, 2nd and 3rd weeks (P < 0.001). The EGF level was also significantly increased at the end of the 1st and 2nd weeks (P < 0.05). Compared with the HRW (1.0 ppm) group, the healing rate was higher and the healing time was reduced in the HRW (2.0 ppm) group. A significant decrease was observed in the IL-6 level at the end of the 1st, 3rd and 4th weeks (P < 0.05) and in the EGF content at the end of the 1 week after the HRW administration (P < 0.01).
【結果】皮膚損傷モデルは、44Gyの電子ビームを使用して正常に確立された。治癒時間は、2つの水素水治療グループで短縮された(P < 0.05)。さらに、水素水によりMDA値(P < 0.05)とIL-6値(P < 0.01)が著しく減少し、加えて2つの水素水治療グループのSOD活性は、1、2、3週目の終わりに蒸留水グループよりも高かった(P < 0.001)。EGF値も1週間目と2週間目の終わりに有意に増加した (P < 0.05)。水素水グループでは1.0 ppmと比較して、2.0 ppmでは治癒率が高く、治癒時間が短縮された。水素水投与後1、3、4週目の終わりにIL-6値(P < 0.05)、水素水投与後1週間の終わりにEGF量(P < 0.01)が有意に減少した。
Collectively, our data indicate that HRW accelerates wound healing of radiation-induced skin lesions through anti-oxidative and anti-inflammatory effects, suggesting that HRW has a healing effect on acute radiation-mediated skin injury, and that this is dependent on the concentration of the hydrogen.
【結論】データは、水素水が抗酸化作用と抗炎症作用を通じて放射線誘発性の皮膚病変の創傷治癒を促進することを示しており、水素水は放射線性皮膚損傷に対して治癒効果があり、それは水素の濃度に応じていることを示唆している。
英語 | 日本語 | 説明 |
radiation-induced skin injury | 放射線性皮膚損傷 | がんの放射線治療などで、放射線の影響により皮膚に炎症(軽いやけどのような状態)が生じた状態。皮膚の乾燥やかゆみ、ヒリヒリ感、熱感、色調の変化(発赤、色素沈着、色素脱失)、表皮剥離などが起こる。 |
6 MeV electron beam | 電子ビーム | ブラウン管の電子銃から放出され一定の方向に進む光(電子の細い流れ)。レーザーに比べて出力が高い。がんの放射線治療で使われる場合、細胞分裂が盛んな細胞(皮膚細胞・がん細胞など)に働きかける作用がある。 |
6 MeV | 内臓の損傷を最小限に抑えながらネズミの皮膚損傷を誘発するための電子ビームの出力量。 | |
Varian linear accelerator | バリアン線形加速器 | 電子またはイオンを直線的に走らせながら加速し、高エネルギーの電子ビームまたはイオンビームを得る装置。 |
distilled water | 蒸留水 | 蒸留によって不純物が取り除かれた、純度の高い水のこと。 |
ppm | パーツ・パー・ミリオン(単位) | 液体の微量な濃度を示す単位。液体中の水素濃度を「1ppm」とあらわす場合、「1Lの水に1mgの水素が含まれている」ことを表す。 |
malondialdehyde (MDA) | マロンジアルデヒド | 脂質過酸化(原子・分子を酸化させ、細胞に損傷を与える反応)物の分解物として生成される化合物で、脂質過酸化の程度をみる主要なマーカー。 |
superoxide dismutase (SOD) | スーパーオキシドジスムターゼ | 細胞内に発生した活性酸素を除去する抗酸化酵素。酸化ストレスから体を守り、老化・がん・生活習慣病・脳卒中・心疾患などの活性酸素が原因で起こる病気を予防する。 |
assay | アッセイ | 検体の存在、量、機能的な活性や反応を、定性的に評価・定量的に測定する方法のこと。 |
Interleukin-6 (IL-6) | インターロイキン-6 | 炎症性サイトカインの一種。免疫応答や炎症反応の調節をする役目をもち、感染症や外傷、自己免疫性疾患などで上昇する。 |
サイトカイン | 細胞間の情報伝達作用を持ち、免疫反応の調整を行うタンパク質のこと。熱を出す、炎症を起こす、血圧を上げるなど様々な反応を引き起こし、身体に浸入した細菌やウイルス等の異物を排除しようとする。 | |
epidermal growth factor (EGF) | 上皮成長因子 | 上皮(皮膚・粘膜など)の細胞の増殖・再生・成長を調節する機能をもつ因子で、人が本来持っているたんぱく質。 |
enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) | 酵素免疫測定法 | 酵素に結合した特定の抗体を利用して、サンプル中の未知の量の抗原(すなわちウイルス)の存在を検出する、現代的なタンパク質検出法。 |
Gy | グレイ(単位) | 放射線によって人体をはじめとした物体に与えられたエネルギーを表す単位。1Gyは物質1kg当り1ジュールのエネルギー吸収を与える量。 |
ジュール(単位) | エネルギー、仕事、熱量、電力量の単位。1ジュールは100グラムくらいのリンゴを1メートル持ち上げるくらいのエネルギー。 | |
anti-oxidative effects | 抗酸化効果 | 活性酸素の発生やその働きを抑制し、活性酸素そのものを取り除く働きのこと。 |
acute radiation-mediated skin injury | 急性放射線性皮膚損傷 | 放射線を照射したことで皮膚細胞がダメージを受け起こる急性炎症(発赤、びらん、水庖等)のこと。 |